~越後三大花火の一つに数えられる、小千谷市片貝町の花火。その文化発信に貢献するべく、鋳造技術を用いた工芸品づくりに挑戦しました。~

INTERVIEW
株式会社日研シェルモールド
代表
品田 明憲(しなだ あきのり) 氏
「商品開発にあたり、燕三条のものづくりや岩手県奥州市の鋳造技術からも学ばせてもらい、良い経験になりました」と品田さん。
地元企業との縁でものづくりに挑戦 花火文化を象徴する工芸品を開発
弊社は昭和48年に設立された、小千谷市片貝町で鋳造製品を製造する会社です。鋳造は、溶かした金属を型に流し込んで製品を作る技術ですが、弊社はその中でも、金型に砂を吹き込んで焼成した砂型を用いるシェルモールド鋳造を得意としています。シェルモールド鋳造の量産性と精密さに優れているという特徴を生かし、建築設備や土木向けの鋳鉄製品を数多く手がけています。この技術を駆使し、ものづくり支援事業を活用して、花火を打ち揚げる煙火筒をモチーフにした工芸品を開発しました。
きっかけは、片貝町で花火の製造打ち揚げを行う有限会社片貝煙火工業さんとのご縁でした。30年以上前、同社の初代社長様が四尺玉花火の打ち揚げに成功した記念品として、煙火筒を模した工芸品の製造を手がけたことがあり数年前、その工芸品を「お土産品として復活させてほしい」とご相談いただいたことからです。
これまでは受託製造が中心でしたが、私自身「自社で企画・販売する製品を作りたい」という思いがあり、新たな商品開発に挑戦することにしました。折しも、弊社で銅合金の鋳造を始めて数年が経ち、技術も安定してきたころ。以前造った鉄製のものは錆びやすいという課題があったので、今回は錆びにくい青銅を採用することにしました。

原料に鉛フリー青銅を採用 こだわりは文字や柄の表現
青銅の鋳造は鉄と比べて、固まる時の収縮による欠陥が出やすく、さらに硬度の違いにより仕上の難易度も増します。シェルモールドで精密な青銅製品を作るのは弊社にとって初めての取り組みでしたので、新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センターに相談し、鋳造シミュレーションをしていただけたのはありがたかったです。その際、センター長から助言をいただき、鉛フリー青銅で製造することに決めました。これも私たちにとっては新しい挑戦です。
シェルモールドだからこそできるのは、細かな文字や柄の表現です。片貝総合センターに立つ実物大の打揚筒モニュメントを参考にし、柄には江戸時代から続く奉納煙火(片貝まつり)で着用される、半纏の模様を取り入れました。
現在、予約分を含め30個を販売済みです。片貝煙火工業さんのアンテナショップでは、地元の方やインバウンドの方が購入してくださっています。また、新潟県の産地直送品を扱うEC サイトや、小千谷市のふるさと納税返礼品としても取り扱われています。

地元の多大な協力によって完成 地域振興や技術継承につなげたい
今回の商品開発では、新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センターや片貝煙火工業さんをはじめ、多くの地元の方々に協力していただきました。小千谷市の産学官連携推進員や塗料会社さんにもお世話になりましたし、パッケージの段ボール箱やラベル作成も地元企業によるものです。地元の生花店さんに用意していただいた花を筒に挿し、地元の写真店さんに宣材写真を撮影していただきました。材料は新潟県内から仕入れてますが、ほぼ、小千谷市内で完結しています。
ベースとなる金型は完成しているので、今後は砂型だけなら1日50本ほど量産が可能です。ただ、仕上げは一つひとつ手作業で磨き上げるため、完成品は1日に1本ほどしか作れません。時間をかけて仕上げる分、高額にはなりますが、その価値を感じていただけると思っています。今後は、お土産として気軽に購入いただける価格帯の商品も展開していきたいです。
今回初めて自社で製品を一から作る経験をし、大変なこともありましたが、良いものができたと思っています。鋳造は地元の方にもあまり馴染みのない技術ですが、「こんなものを造っている会社です」と示せる製品になりました。自社の技術やものづくりを地域の皆さんに知っていただくきっかけになれば嬉しいです。
新潟の花火といえば長岡まつり大花火大会が有名ですが、片貝の奉納煙火もまた違った素晴らしさがあり、町全体でその魅力を発信する取り組みを進めています。今回の商品開発もその一環です。花火文化の発信や観光振興に役立てたいですし、地元の子どもや若者に鋳造技術に興味を持ってもらい、将来的に地域産業を守ることにもつながればと期待しています。

自治体担当者

小千谷市 商工振興課
地域産業係
主任
須田 桃香(すだ ももか) 氏
株式会社日研シェルモールド様は、ものづくりが盛んな当市において、シェルモールド鋳造技術を駆使し、高品質な製品を製造されています。
本事業では、小千谷市片貝町で毎年開催される「片貝まつり」において打ち揚げられる花火「四尺玉」をモチーフとするBtoC向けの工芸品の開発に取り組まれました。開発にあたり、県工業技術総合研究所中越技術支援センターと共同研究を実施するとともに、県外の鋳物工芸品製造事業者の視察や当市産学官連携推進員との連携により、鋳物の良さを活かした唯一無二の工芸品が完成しました。
片貝まつりには全国各地からファンが訪れます。この「四尺玉煙火筒」が「片貝まつり楽しみだな」、「お土産に買おうかな」と片貝まつりとファンのみなさんをつなぐきっかけとなり、地域活性化や伝統継承など好循環が生まれるとともに、製造事業者のBtoC事業へのモデルケースとなることを期待しています。
株式会社日研シェルモールド
〒947-0101
新潟県小千谷市片貝町626-9
TEL:0258-84-2434
業務内容
鋳物製品各種およびシェル中子の製造


地元探訪
小千谷市はは新潟県のほぼ中央、日本一長い「信濃川」により形成されたまちです。冬の豪雪と、その雪解け水がもたらす美しい自然や田園の中で、市特有の文化や工芸品を育み、多彩な伝統産業が息づいています。


(左)片貝まつり(浅原神社秋季例大祭奉納大煙火)
毎年9月上旬に開催される古き良きお祭りです。花火は神社への奉納を意味し、成人や還暦を祝う花火など、さまざまな想いを込めた奉納煙火が打ち揚がります。世界最大級の花火「四尺玉」が打ち揚がることでも有名です。
(右)おぢや風船一揆
真っ白な雪原にカラフルな熱気球がいくつも浮かぶ、冬の風物詩。毎年2月下旬に2日間にわたって開催されます。熱気球の試乗体験や花火と熱気球との共演「グローバルーンフェスティバル」も必見です。この幻想的な世界は一見の価値あり!
この事業で活用された補助金はこちら
企業等の地域資源を活用した新商品開発等に対し市町村が支援を行う場合に、財団が当該市町村に対し補助金を交付することで、地域産業の育成・振興に資するよう地域における投資や雇用の創出を促進するものです。