宮城県木城町の概要
人口 ▶ 4,404人(R8.5月1日現住人口) 面積 ▶ 145.96㎢
木城町は、宮崎県のほぼ中央に位置します。九州山地に囲まれ、町の中央を清流小丸川が流れる「水と緑豊かなまち」です。本事業の対象地域である中之又地区は、木城町中心部から車で約50分の山間部に位置し、25世帯31人が暮らす小さな集落です。柚子や原木椎茸、こんにゃくなどの農産物が生産されています。また、地域に伝わる「中之又神楽」は国指定重要無形民俗文化財に指定されており、豊かな自然とともに伝統文化が今も色濃く残る地域です。



課題と事業の背景
中之又地区は、かつて松尾鉱山や林業で栄え、昭和20年代には約800人が暮らしていましたが、松尾鉱山の閉鎖や林業の衰退とともに人口が減少していきました。人口減少とともに子どもの数も減り、中之又中学校、中之又小学校もそれぞれ閉校となりました。現在では25世帯31人が暮らしており、その約8割が65歳以上の高齢者となっています。このままでは、将来的に地区の存続が危ぶまれる状況です。
このことから、本事業では「地域で稼ぐ仕組みづくり」「民俗、文化、伝統芸能の継承」「有機農産物の振興」を柱に、「中之又地区が今後も自分たちで稼ぎ、生活していけるような持続可能な仕組みづくり」を目指します。
国指定重要無形民俗文化財である中之又神楽や、柚子、原木椎茸、あくまきなどの地域資源を活かし、交流人口や関係人口の創出、移住促進につなげることで、中之又地区の集落的・文化的存続を目指します。

令和6・7年度の取り組み
地域で稼ぐ仕組みづくり
中之又地区の現状分析や地域住民との協議をもとに、「中之又地区における持続可能な地域づくり計画(中之又地区地域再生計画)」を策定し、目標の共有と見える化を図りました。
また、住民有志により「中之又振興共生合同会社」が設立され、地区内の雇用創出や地域資源を生かした取り組みを通じて、地域自らが稼ぐ基盤づくりを進めています。同社では、地区で収穫した柚子の果汁を町内の飲食店や役場へ出荷するなど、新たな事業も始まっています。
さらに、担い手確保を目的とした「おためし地域おこし協力隊」事業では、1年目・2年目ともに、想定を上回る応募がありました。2年目の令和7年度には、柚子収穫やDIY、VR 神楽、祇園滝キャニオニングなど、地域資源を活かした体験プログラムを実施し、終了後も参加者の一人が地区に長期滞在するなど、継続的な交流にもつながっています。

民俗、文化、伝統芸能の継承
国指定重要無形民俗文化財である中之又神楽を生かしたツーリズムの造成を目指し、「おためし地域おこし協力隊」事業と連携した取り組みを実施しました。VR神楽体験や地域木材を使った絵馬づくり、中之又鎮守神社での奉納体験のほか、中之又神楽の関係者との交流もプログラムに組み込み、参加者が神楽に触れる機会を創出しました。これにより、神楽を軸としたツーリズムプログラムの形づくりが進むとともに、継続的に関わる人材の確保や関係人口の拡大にもつながりました。
さらに、令和7年度には中之又神楽のPR にも取り組みました。大阪・関西万博での神楽奉納を通じて国内外へその魅力を広く発信したほか、その様子はテレビ(MRT宮崎放送)でも紹介されました。
また、米良の神楽に属する6団体を木城町に招き、「米良の神楽まつり」を開催し、神楽の披露や関係者同士の交流を通じて、神楽文化のPR と地域間の交流を深めました。

有機農産物の振興
中之又地区の柚子、原木椎茸にスポットをあて、本町有機農業推進室と連携のもと、中之又地区住民4名が有機JAS農産物・加工食品講習会を受講し、有機JAS認定に向けた取り組みを進めています。
また、中之又地区の柚子、蜂蜜、原木椎茸に加え、町内産の有機野菜(無農薬野菜を含む)を活用し、首都圏飲食店においてグルメフェアを実施しました。これにより、中之又地区の食材の魅力発信につながるとともに、同飲食店における木城町産農産物の継続的な仕入れにつながり、販路拡大の一歩となりました。あわせて、「中之又振興共生合同会社」からも中之又の食材の仕入れが始まっています。
さらに、町内飲食店と連携し、柚子や原木椎茸を活用した「柚子ポン酢」「だし醤油」を商品化したほか、本町有機農業推進室と協働し、柚子フレーバーの甘酒も開発しました。これらの商品は、中之又地区の生産者や法人の食材を活用して製造・提供されています。

令和8年度以降の取り組み
2年間の事業成果を踏まえ、3年目以降は、「中之又振興共生合同会社」を中心とした自立的・継続的な地域運営体制の構築を進めていきます。
これまでの取り組みを通じて、地域住民による目標の共有が進み、合同会社の設立や中之又地区の農産物を活用した商品開発・販路拡大など、新たな動きが生まれています。今後は、これらの取り組みを地域内で継続・発展させていくことが重要です。
そのために令和8年度は、持続可能な地域運営体制の基盤づくりの期間として、地域で活動する外部人材の確保やその生業づくり、神楽ツーリズムや商品開発の推進、中之又神楽の未来を担う人材の発掘に取り組み、地域内で事業を継続できる仕組みづくりを進めます。
引き続き外部専門家や多様な関係者と連携しながら、中之又地区における生業と担い手の確保、地域資源を活用した関係・交流人口の拡大を進め、最終的な到達点である中之又地区の集落的・文化的存続を目指します。
自治体担当者

木城町
地域政策課 地域再生推進室
松本 文勝(まつもと ふみかつ)氏
木城町の中之又地域は、緑深い山々に囲まれた心の故郷のような豊かな自然があふれています。そこでは、ゆったりとした時間が流れ、訪れた方に癒しを届けます。文化面では、500年の伝統がある中之又神楽が受け継がれ、産業面では、柚子や原木椎茸、こんにゃくなどの農産物が生産されています。
しかし、人口減少と高齢化が進み、将来的には地域の存続が危惧されています。中之又地域に残る木城町の宝を後世につないでいくため、地域再生マネージャー事業を活用させていただき、外部専門家の専門的な知見によるアドバイスをいただきながら、一つずつ取り組みを進めています。
今後は、昨年設立された合同会社を核として、中之又地域で雇用とビジネスが循環していく仕組みができるよう事業を継続していきます。地域住民の主体性を尊重し、人と人のつながりを大切にして、地域再生の挑戦を続けていきたいと思います。
外部専門家

一般社団法人九州のムラ
代表理事
養父 信夫(ようふ のぶお)氏
今回の事業は中之又集落という全戸数25世帯、総勢31名のいわゆる「限界集落」の再生プロジェクトである。集落の住民の平均年齢は76歳を超えており、新たなムラの担い手を繋げることが命題と感じた。
そのため1年目から「地域おこし協力隊」の人材発掘につなげるため、都市部に暮らす人たちに呼びかけ、「おためし地域おこし協力隊」というムラ暮らしを体験していただいた。かつて山村留学を長年受け入れてきた集落に交流による活気が蘇ってきた。財団事業2年目のムラ暮らし体験に参加した方の1名が、神楽研究をライフワークとする首都圏の大学に通う中国籍の女性で、彼女は論文を書くため、すぐに宮崎県内に居を移し、神楽の舞い手として集落の民さんの指導のもと練習を重ね、本番の神楽奉納にも参加した。その様子は地元メディアでも放送された。この奇跡的な新たな人材とのつながりと呼応するように、集落内の若手3名(といっても60代2名、70代1名)がお金を出し合い、集落の生き残りをかけて合同会社を設立するところまでこぎ着けた。小さな集落であるほど、1名の意義は大きい。
今後、更に合同商社とも連携する地域おこし協力隊(農林業担当)の更なる導入も目指し、“小さなムラの価値ある挑戦”を応援していきたい。
外部専門家

株式会社FOODSNOW
代表取締役
平尾 由希(ひらお ゆき)氏
食の観点からの1年目は、中之又地区の現状把握と足元にある地域資源の掘り起こしを行いながら、飲食・食品加工事業者、有機農業関係者、木材の加工町内事業者などとの連携による地域活性化を模索した。中でも、加工施設で生産される「あくまき」「団子」「こんにゃく」といった郷土食は非常に魅力的なものの、持続可能な製造体制や金額設定、施設老朽化に課題を抱えていた。
2年目は中之又振興共生合同会社が発足し、調理室を含む旧小学校改修の道筋がついたことで、加工品製造・販売、地区農産物の取りまとめ、有機農業への参画などを通じた収入源の確保に向けて動き出した。
地区内で放置されている『柚子』を『中之又ほったらかし柚子』と名付けて商品化を図り、木城町内和食店と連携した『中之又ほったらかし柚子塩ラーメン』を中之又神楽の例大祭に合わせてリリースした。また、『中之又ほったらかし柚子ポン酢』『中之又原木しいたけ醤油』の開発では、柚子の搾汁までを合同会社が担うことで、収益増を狙った。同商品は販売開始から3ヶ月で累計販売数450本を突破するなど、売り上げは好調で、中之又地区の挑戦を後押ししている。
合同会社は、有機JAS認定や商品開発講座などに積極的に参加しながら、3年目は柚子の高付加価値化と自社商品開発を目指す。
農作物や商品の価値、地域の姿勢やつながりをブランディングを通じてどう伝え、届けるか、ワークショップやデザイン制作物による支援を弊社で継続しながら、合同会社の自社商品開発と、生産・製造体制の強化を進めていく。
観光・地域資源紹介

標高60メートルの高台にある戦国時代の城跡「城山公園」

標高60メートルの高台にある戦国時代の城跡「城山公園

19種類の露天風呂と2種類のサウナが楽しめる「木城温泉館 湯らら」。毎月様々なイベントを開催している。
この事業で活用された補助金はこちら
ふるさと財団では、地域再生マネージャー事業の一環として、市町村等が地域再生に取り組もうとする際の課題への対応について、外部専門家を活用して地域住民主体による持続可能な実施体制を構築し、ビジネスの創出、地域経済の活性化、移住・定住の促進、関係人口の創出等を図るために実施する事業について必要となる経費の一部を補助する「ふるさと再生事業」を実施しています。