山形県遊佐町
人口 ▶ 11,757人 面積 ▶ 280.39㎢
遊佐町は、山形県の最北西部、「山形県のおでこ」に位置します。西には日本海、北には鳥海山を望む雄大な景観に恵まれ、町は鳥海山・飛島ジオパークのエリアに含まれています。また、「湧水の里」とも呼ばれ、町内各地で美しい湧き水があふれています。この豊富で良質な水資源に支えられ、遊佐米やパプリカ、メロンなどの特産品が全国的に知られており、自然と産業が調和した魅力あふれる町です。
課題と事業の背景
遊佐町では、少子高齢化と人口減少の進行により、農業や漁業、商業など地域産業の担い手不足が深刻化し、地域経済の活力低下が進行しています。
町の主要な観光拠点である道の駅「鳥海(ふらっと)」は、年間約200万人が訪れる観光拠点であり、農産物直売所や鮮魚販売を通じ、地域産業と雇用を支えてきましたが、建設から約30年が経過し、施設の老朽化や機能面での課題が生じています。また、日本海沿岸東北自動車道の延伸により交通の流れが変化することで、「通過される町」となってしまうことも懸念されています。
こうした状況を踏まえ、町では遊佐鳥海IC隣接地への道の駅移転整備を進めています。新たな道の駅は、地域産業の振興や観光情報の発信、防災拠点としての役割を担う施設として整備し、交流人口の拡大と持続可能なまちの形成を目指します。

―新たな道の駅からは鳥海山を一望でき、館内にはジオパークを体験しながら学べるスペースも整備されます。
令和7年度の取り組み
令和7年度は、地域資源を活用した商品開発やアクティビティ開発に取り組むとともに、新たな道の駅の開業後すぐに自走できる体制づくりを進めました。
地域資源を活用した商品開発
四季を通じて「道の駅を目指して訪れたくなる食」をつくるため、商品開発チームを立ち上げ、地元特産品を活用した新商品の開発に取り組みました。町内の農産物の生産状況を調査し、パプリカの生産が盛んであること、また山形県内での長芋の産出額がトップであることを踏まえ、これらの地域資源を活かした商品づくりを進めました。地元産品を活用することで、地域内での経済循環や産業の活性化にもつなげています。
また、商品開発チームの設置により、関係者が一体となって取り組む体制が整い、事業に対する意識向上にもつながりました。


開発した商品は、パプリカを焼いて甘みを引き出した「焼きパプドレッシング」、長芋の食感と風味を生かした和風ドリア「東北・山形 遊佐ながいも和ドリアさん」、長芋を温かいごはんにのせて手軽に楽しめる「あったけごはんさのっけるだげだの遊佐ながいも漬け丼」の3品です。パッケージデザインについても、遊佐町らしさや商品の分かりやすさを重視し、話題性のある商品となるよう工夫しました。現在は、さらに2商品を企画・開発中であり、令和8年度中の商品化を目指しています。



ジオパークを活かしたアクティビティ開発
遊佐町は、日本ジオパークネットワークに加盟する鳥海山・飛島ジオパークのエリアとなっています。この豊かな自然環境を活かしたアクティビティの調査・開発に取り組み、シーカヤック体験の整備を進めています。
海底まで見えるシーカヤック体験は非常に魅力的ですが、まだ一般的な知名度は低い状況です。そこで、シーカヤックで港から飛島まで渡る1組限定の高額ツアーを開発し、透き通った海と鳥海山の景観を楽しめる遊佐町ならではの体験をPRし、カヤックの町としての知名度向上を目指しています。
あわせて、気軽にカヤックを体験できる体制の整備についても検討しており、カヤックフィッシングや他のジオツアー、E-バイクツアーなど、多種多様な自然アクティビティへの誘因も図っています。こうした取組により、道の駅を拠点とした広域的な周遊観光の実現を目指しています。

持続可能な運営体制の構築
新たな道の駅は、町出資による第三セクター方式から、指定管理者制度へ移行します。運営は、指定管理者である「共同企業体ジオ鳥海パートナーズ」が担い、現在の事業者は、産直や物販などで引き続き関わっていきます。
外部専門家による現地訪問や戦略会議を通じ、現在の運営事業者と新たな運営事業者の運営体制や役割分担、人材確保、販売戦略など、開業後の自走に関する課題を明確化しました。これらの課題に対して、外部専門家の助言をもとに、人員配置の見直しや業務体制の整理など、持続可能な運営体制構築に向けた具体的な整備を進めました。
令和8年度の取り組み
令和8年度は、新たな道の駅開業の前年にあたる重要な準備期間です。これまでに開発した商品のブラッシュアップに加え、新商品の開発やテストマーケティングを進め、開業後の販売につなげていきます。
また、道の駅を拠点としたアクティビティの開発も引き続き進めます。昨年度の現地視察や会議の成果を踏まえ、運営体制を整えたうえでモニターツアーを実施し、開業に向けた周知を図ります。これにより、遊佐町内の周遊観光の促進にもつなげていきます。
これらの取り組みを通じて、プロモーションやマーケティング戦略などの実地経験を積み重ねるとともに、オペレーションや運営体制の確立を図ります。そして、開業後すぐに自走できる体制を整え、円滑な施設運営と地域活性化につなげていきます。
自治体担当者のコメント

遊佐町 企画課 PAT整備推進室
主査 友野 友(ともの とも)氏
遊佐町は海抜0mから裾野が広がる雄大な鳥海山と、美しい夕日が沈む日本海に囲まれた自然豊かな町です。その自然の恵みである湧水や農水産物に恵まれ、四季折々の景観が魅力となっています。
一方で、県内でも人口減少と高齢化が進み、担い手不足が課題です。雇用機会が限定され、若者の流出や地域活力の維持、持続可能な遊佐町への推進が大きな課題となっています。また、遊佐町の観光拠点である道の駅鳥海も老朽化などにより、新たな道の駅への移転整備事業が進んでいます。その開業準備として、地域再生マネージャー事業を活用し外部専門家からアドバイスをいただきながら、より魅力ある道の駅を目指してきました。
持続可能な遊佐町を実現可能にするため、まずは地域資源を活用すること、開業後の運営体制を整えるということに注力し、これまで見えてこなかった課題が多く可視化され、今後の体制整備の基盤づくりができたと感じました。
また商品開発においては、チーム自らが開発し販売するところまでできるようになり、自走できる体制を後押しできました。引き続き関係者の方々と連携しながら、遊佐町の魅力を最大限に生かした拠点となる新たな道の駅の整備を行ってまいります。
外部専門家のコメント

株式会社シカケ
代表取締役
金山 宙暉(かなやま ひろき) 氏
遊佐町では、新たな道の駅の開業を見据え、第三セクターと行政が連携し、道の駅を核とした地域の交流・観光・販売機能強化に取り組んでいます。
本事業では、現場運営や商品開発、組織体制、意思決定のあり方を整理し、稼ぐ力を高めるための土台づくりをサポートしました。第三セクター特有の構造により、危機感が醸成されにくい点や投資の遅れ、役割分担や実行管理の不十分さ、商品開発の属人的な判断などが課題として浮かび上がりました。
これに対し、売上・利益目標からの逆算や役割分担の明確化、会議や情報共有の整理、商品開発プロセスの型づくりなどを進めました。
その結果、これまで曖昧だった課題が「見える化」され、関係者間で「なんとなく貯める経営」から「稼ぎ、そのために投資する経営」へ転換の必要性について共通認識が醸成されつつあります。遊佐町が本気で稼ぐ第三セクターへと変わるための重要なプロセスの一つとなりました。
外部専門家のコメント

一般社団法人BOOT
代表理事
矢部 佳宏(やべ よしひろ)氏
遊佐町は、鳥海山・飛島ジオパークの中核を担う町で、鳥海山愛に溢れた町です。新たな道の駅は、鳥海山を眺める絶好のロケーションにあり、地域ブランディングや観光プロモーション、まちづくりによる経済活性化の拠点として位置づけられています。
現在の課題は、鳥海山を核とした地域ブランディングや観光まちづくりを戦略的かつ継続的に推進するための組織体制やロードマップが十分に整っていないことです。各取組が点在的に進んでおり、民間事業やアクティビティが自発的に生まれる仕組みも未整備です。
本事業では、関係者へのヒアリングや事例紹介を通じて、地域ブランディングの意義や目指すべき方向性を共有してきました。鳥海山やジオパークを活かした多様なコンテンツやアイデアの整理、担い手の役割分担を明確化し、道の駅を拠点とした住民主体のまちづくりやアクティビティ創出の仕組みづくりを進めています。
今後は、これらを持続可能な運営体制の構築を目指します。
観光・地域資源紹介




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ふるさと財団では、地域再生マネージャー事業の一環として、市町村等が地域再生に取り組もうとする際の課題への対応について、外部専門家を活用して地域住民主体による持続可能な実施体制を構築し、ビジネスの創出、地域経済の活性化、移住・定住の促進、関係人口の創出等を図るために実施する事業について必要となる経費の一部を補助する「ふるさと再生事業」を実施しています。