潮風を受けて育った羊肉でオリジナル肉まんを開発。地域ブランド向上に挑む。

道内で畜産・観光牧場を営む(株)流山が、羊肉を使った肉まんの開発に挑戦しました。商品づくりに込められた、地域振興への想いとは。

INTERVIEW

株式会社 流山 代表取締役
宮本 英樹(みやもと ひでき)氏

「良質な食材は、市場を通して都市部や道外に流通することが多い。地元で提供・消費されるような仕組みづくりも必要」と宮本さん。

地の利を活かしたこだわりの肉質
自慢の羊を使った肉まん開発に着手

 私たちは、道内の遊休農地の解消に向けて取り組んでいる農業生産法人です。これまで荒れ地を購入・借用し、牧草地として整備してきました。現在は積丹町、七飯町、沼田町の道内3カ所に牧場を構え、牧草地の造成や管理を行いながら、馬の飼育や羊の畜産業を営んでいます。あわせて林業にも取り組み、森林管理の過程で生まれる薪を燃料や加工原料として活用したり、樹液は食品原料として道内の飲食店や土産店に卸したりしています。さらに観光事業も展開し、牧場見学や自然体験の受け入れなど、地域資源を生かした幅広い取組を進めています。

 積丹町にある「積丹しおかぜ羊牧場」は、かつての町営牧場だった遊休農地を活用し、牧草地として整備した場所です。羊たちは海のすぐそばという立地の中で、のびのびと放牧されています(冬季のみ閉鎖し、羊は七飯町の牧場へ移送)。潮風を受けて育った牧草を食べ、さらに地元の漁師さんから廃棄されるホソメ昆布を買い取って飼料として与えることで、羊肉に独特の旨みが生まれます。放牧によって筋肉量も増え、赤身が多く、しっかりとした歯ごたえがあるのも特徴です。

スタッフが愛情たっぷりに育てる「しおかぜ羊牧場」の羊たち。
冬季を除き、約52ヘクタールの広々とした敷地で放牧される。

 そうして丹精込めて育てた羊肉を使い、令和6年度ものづくり支援事業の採択を受けて開発したのが「積丹羊肉まん」です。開発の背景には、国産羊肉の価格高騰があります。輸入肉に比べて流通量が少ない国産羊肉は、需要の高まりとともに価格が上昇しており、今後さらに高騰が進めば、精肉は一般の方にとって手の届きにくい存在になるかもしれません。より購入しやすい価格帯の加工商品を提供したいと考えていました。また、積丹町からふるさと納税の返礼品としての提案をいただいたことや、地域のイベントやお祭りで食べ歩きできる商品を求める声があったことも、商品開発に着手した大きな理由です。

ふっくらとした甘みのある生地に、粗めのミンチにした羊肉がたっぷり。
食べごたえ抜群の「しおかぜ羊肉まん」。

生地には樹液、餡には羊骨スープ
積丹の恵みが詰まった理想の味を追求

開発にあたっては、以前から懇意にしていた札幌市の中華料理店「宮の森れんげ堂」さんに協力を依頼し、特別に引き受けていただきました。もともと同店の肉まんをとても美味しいと思っていたので、大変心強かったです。製造工程は、具材づくり、餡づくり、生地づくりの大きく3つに分かれ、分担して行います。羊肉や玉ねぎを刻む工程はすべて手作業で、肉は粗めのミンチにして食感を出しています。餡は、具材を中華鍋で炒めて味付け。生地を練ったら、こちらも一つ一つ手作業で具を包み、蒸し上げて完成です。

 肉まんといえば豚肉が一般的で、羊肉を使ったものは意外と少なく、あってもジンギスカン風の味付けが主流です。しかし私たちは「しおかぜ羊牧場」として塩味にこだわり、生地も塩味を引き立てるため、やや甘めの風味をつけたいと考えました。甘みづけに使用したのは、自社の林業で採取した積丹の白樺の樹液です。一般的な砂糖とは異なるやさしい甘さになり、独自性と地域性もプラスされています。さらに、中国の「点心師」の資格を持つ職人さんの協力を得て、具材が外から見える包み方にも工夫を凝らし、見た目も楽しんでいただけるよう意識しました。また、餡に積丹産ホソメ昆布を使った羊骨スープを使用しているのもポイントです。国産羊肉はくさみが少ない反面、羊特有の香りを求める声もあるため、スープで風味を補っています。スープによる水分量の調整なども試行錯誤し、ようやく納得のいく仕上がりになりました。

一つ一つ丁寧に手で包んで仕上げる。手間を
かけたぶん、満足感のある肉まんが完成する。

 現在は、地元のイベントや札幌の朝市などで販売しているほか、ふるさと納税の返礼品としても申請中です。催事では「羊の肉まんは珍しい」「生地が美味しい」「塩味とのバランスが良い」といった好評の声をいただいています。また、宗教上の理由で豚肉を口にできない外国の方にも喜ばれ、お土産として大量に購入する方もいらっしゃるほど。リピーターも増えていて、手応えを感じています。

 羊肉まんの製造は、現在すべて手作業で行っていますが、今後は生産ラインを2種類に分ける構想があります。一つは手作りの良さを生かしたプレミアムライン、もう一つは工程を簡略化・機械化し、価格を抑えた量販ラインです。これにより、より多くの方に届けることが可能になります。一般に羊を使った肉まんが少ないのは、おそらくコスト面が大きな課題になっているのでしょう。私たちは羊の飼育から加工まで一貫して行っているため、ある程度のコストを抑えられる点が強みです。この強みを活かしながら、生産体制を強化していきたいと考えています。

生産体制を整備し、量産化も構想
地域資源の魅力を伝える挑戦を続ける

 来年度は年間約2,000個の販売を見込んでいますが、早い段階で1万個規模へと拡大を目指しています。量産体制が整えば、プレミアムラインは飲食店向けに、量販ラインは後志地域の物産店などでの販売に向けて稼働させたいと考えています。また、製造工程の一部外注化も視野に入れており、地域の福祉雇用につなげていくことも将来的な目標です。

 地域の方々と連携しながら、新たな雇用の場を生み出すことにも貢献したいと考えています。さらに、他町村の牧場からも同様の商品開発の相談が寄せられており、生産ラインの共有など横展開の可能性も見え始めています。

 今回の取組を通じて、私たちが目指しているのは、積丹町のブランド力向上です。積丹といえばウニの名産地として知られていますが、それに続く地域資源はまだ多くありません。ウニの漁獲量が減少し価格が高騰するなかで、「羊肉まん」をきっかけに“積丹の羊”の魅力を知っていただくことが、地域の新たな価値創出につながると考えています。

 事業を始めて間もない私たちは、いわばチャレンジャーです。だからこそ既存の枠にとらわれず、独自の発想や販売ルートの開拓など、新しい取り組みに挑むことができると考えます。「しおかぜ羊肉まん」を食べた方が地域に興味を持ち、積丹への訪問や再訪につながるような流れを生み出していけたら嬉しいです。

積丹町 企画課
主査
高橋 野亜 (たかはし のあ)氏

 株式会社流山は、遊休化した町の公共牧場の立地を生かし、「羊」を飼育する牧場を経営しています。断崖絶壁の日本海の潮風でミネラル豊富な牧草と、積丹町が誇る特産品「ウニ」の餌料「ホソメコンブ」という海の資源を羊の餌料として活用する水畜連携事業は、新たな過疎地の地域資源の「価値の創生」を目指す積丹町を代表する地方創生プロジェクトの一つです。

 この度は同社が目指す「日本一の積丹しおかぜ羊」を気軽に味わっていただくため、「羊肉まん」を開発いただきましたが、樹液の甘みを感じる生地や昆布を混ぜ込んだ餡など、自然豊かな積丹町らしさを感じる素晴らしい逸品が出来たと誇りに思っています。

 このような過疎地・半島地域の優れた資源を活用した特産品開発の取組を、これからも小規模自治体・農山漁村だからこそ可能な「小さな官民連携の輪の力」の結集を町が支援し、町の活性化の新たな力を育てていきたいと考えています。

〒046-0202
北海道積丹郡積丹町婦美町29-1
TEL:080-1342-3153

畜産および観光牧場運営、森林管理

※写真は「積丹スピリット」の蒸留所建物

 積丹町は北海道の中央部から日本海に突き出た積丹半島の先端に位置しており、かつて鰊の千石場所として大いに栄えた歴史があります。日本海の荒波に削られた奇岩群と「しゃこたんブルー」と称される美しい海の景勝、そして絶品の特産品「ウニ」を求めて夏季には多くの方が詰めかけます。

神威岬

大海原へとダイナミックにせり出した神威岬の先端まで馬の背のような道の上を20分ほど歩くと周囲300度の丸みを帯びた水平線を見ることができます。初夏には町花のエゾカンゾウが見事。「積丹半島と神威岬」として北海道遺産に選定されています。

積丹岬・島武意海岸

「しゃこたんブルー」を見下ろす展望台。暗いトンネルを抜け、いきなり眼下に現れる鮮やかな海は衝撃的な美しさです。「日本の渚百選」のひとつに選定されています。

この事業で活用された補助金はこちら

企業等の地域資源を活用した新商品開発等に対し市町村が支援を行う場合に、財団が当該市町村に対し補助金を交付することで、地域産業の育成・振興に資するよう地域における投資や雇用の創出を促進するものです。