エデュテインメントを通して子どもたちと地域がつながる機会を提供

※「 エデュテインメント(edutainment)」は、「教育(education)」と「娯楽(entertainment)」を組み合わせた造語で、学習要素と遊びを融合させたコンテンツを指します。

 株式会社JTBが展開する「Kidsジョブチャレンジ」は、自治体・企業・学校などが連携し、子どもたちが地域を舞台に、多様な仕事や人々と出会いながら、地域社会や経済の仕組みを実践的に学ぶ、単なる職業体験に留まらない体験型キャリア教育プログラムです。教育や観光振興、関係人口の創出・拡大など地域の政策課題に応じ、企画段階から自治体と丁寧に対話を重ねながらプログラムを展開しており、シビックプライドの醸成や学生・地域との新たなつながりの創出など、さまざまな相乗効果も生まれています。

株式会社JTB
企画開発プロデュースセンター
企画開発担当部長
曽根 進(そね すすむ)氏


エリアソリューション事業部 Senior Director
井上 孝矩(いのうえ たかのり)氏


BS第二事業部
マーケティンググループ
グループリーダー
徳野 麻里子(とくの まりこ)氏

地域特有の職業に関心 専用通貨で経済活動も学ぶ

 Kidsジョブチャレンジ生みの親で現在も本プロジェクトの企画設計の中心である井上孝矩さんは、事業を始めたきっかけとして「子どもたちが五感を使って本物の社会や仕事に触れる機会が少ないことに課題意識を抱いていた」と話します。

 子どもたちが多様な仕事や社会との出会いを通じて、社会の仕組みや地域の魅力を楽しく学べる場をつくりたいという思いから、2011年に前身事業を立ち上げてノウハウを積み重ね、2018年に長崎県平戸市でKidsジョブチャレンジとして開催をスタート。これまで全国16市町村で実施し、参加者募集開始から早々に予約枠が埋まることもあるほどの人気イベントに成長しました。今後の開催予定を含めると全国28市町村、保護者らを含めた参加者数は延べ10万人を見込んでいるといいます。

 イベント当日は、地元の子どもたちはもちろん、近隣地域からも参加者が集まります。第一次産業から第三次産業まで多彩な職業体験プログラムが揃いますが、平戸市で開催した際は、車で2時間以上も離れた福岡県の都市部に住む子どもたちも来場し、漁師、農作業、ホテル業など、いつもは目にしない職業の体験に夢中になったといいます。

地域ならではの仕事を子どもたちが体験。
販売員のお仕事体験で地元の方々と触れ合う

「仕事の楽しさだけではなく大変な部分もリアルに体験し、五感を刺激しながら学んでもらう。子どもたちの“生きる力”を育むことを目指しています」(井上さん)。

 また、子どもたちは、職業体験の報酬として専用通貨を受け取り、開催期間中に地域の協力店舗等で
実際に利用することができます。働いて対価を得るという経済活動を学び、さらに地域を巡るきっかけをつくり、地域経済への波及効果も生み出す仕掛けです。

事業効果を最大化 「三方よし」の実態とは

 自治体ごとに、地域資源や政策課題に合わせてプログラムを設計できる点も特徴です。後援には各自治体の教育委員会が入り、大学および学生が運営に携わる例もあります。Kids ジョブチャレンジ事業の推進・広報を担う徳野麻里子さんは、「イベントを実施する際、最初に行うのは、開催目的を明確にすること」と話します。

 地域の子どもたちの教育を目的とするのか、交流人口の拡大を目指すのかなど、自治体を中心としたプロジェクトオーナーと方向性をしっかりと共有。その上で、観光、教育、商工、環境部門など幅広い関係者を巻き込み、イベント会場の規模や予算に応じて、開催に必要な実施体制を整えていきます

 「子どもたちは学びを得られ、企業はPRやCSRの向上、自治体は誘客や地域活性化につながる。それぞれの価値を同時に実現できる『三方よし』が叶うのが最大の特徴です」(徳野さん)。

 来場者アンケートでは「満足した」という声が多数を占め、出展事業者もほぼ100%が「来年も参加したい」と回答しているといいます。

産官学をつなぐプラットホーム

 国・自治体とも連携して地方創生・産官学連携に取り組む曽根進さんは、「Kidsジョブチャレンジは、地域人口の流出や地域産業とのマッチング不足などの課題解決につながる取組であり、未来を担う
子どもたちへの投資は地域企業の活力にもなり、交流人口の拡大や地域の魅力発信など、幅広い地方創生につながる」と期待を寄せています。

 実際に、イベント参加者が開催地へ関心を持ち、ふるさと納税の寄付先として選ぶという事例もあるなど、その効果は開催当日にとどまりません。

 井上さんは、「開催して終わりではなく、イベントをきっかけに『地域にまた来たい、関わりたい』という関係人口・応援人口を増やしていきたい。点を線にして、それら結節点を面にしていくことが地方創生につながります」と話します。

 今後も、全国を舞台に、子どもたちと自治体・企業・学校をつなぐ産官学連携プラットフォームとして、新たな学びと地域の未来づくりに貢献していきます。

大学および学生が運営に携わることも多い。

平戸市 文化観光商工部観光課
主任主事 赤木 奈美(あかぎ なみ) 氏

「何人来たか」から「何が残ったか」へ

 平戸市では、Kids ジョブチャレンジを、子どもたちの成長機会の創出と交流人口の拡大を同時に図る取組として継続してきました。開催を重ねる中で、市内外から訪れる子どもたちが様々な仕事を体験し、地域の人や産業に直接触れる機会が生まれています。

 また、市内の事業者にとっても、自らの仕事や技術を子どもたちに体験してもらうことが、その魅力や社会的な役割を改めて見つめ直す機会となっています。

 今後、私たちがさらに重視したいのは、イベントを開催して「何人が訪れたか」という成果だけではなく、その先に「地域に何が残ったか」という視点です。市外の子どもたちには、平戸を知り、また訪れたい、さらには将来何らかの形で関わりたいと思ってもらうこと。市内の子どもたちには、身近に魅力ある仕事や技術、それを支える人たちがいることを知ってもらい、ふるさとへの愛着や将来の仕事への関心につなげていきたいと考えています。

地域の未来を育てる観光へ

 受入事業者にとっても、自らの仕事を子どもたちに伝えることは、その価値を再認識し、仕事や地域への誇り、いわばシビックプライドを高める機会になります。 

 また、Kidsジョブチャレンジをきっかけに生まれた地域とのつながりを、その後も継続していくことが重要です。交流人口を増やすことだけではなく、地域の人や産業を育て次の世代へとつなぐ観光を目指し、Kidsジョブチャレンジをその実践の一つとして、今後さらに磨き上げていきたいと考えています。