
CONTRIBUTOR
国土交通省 道の駅第3ステージ推進委員会
跡見学園女子大学 准教授
篠原 靖(しのはら やすし)氏
専門研究分野は「観光による地域活性化論」、「交流人口拡大論」地域に眠る観光素材を掘り起こし、具体的な旅行商品化を図る面白企画の達人。大胆かつ斬新な発想での商品開発力はテレビ・新聞等マスコミでも有名。現在、全国各地で新しい観光プログラムの開発や人材育成セミナーを担当し、広域観光圏やDMO 戦略による集客システムの開発等を手がけている。また国土交通省「社会資本整備審議会委員」、「道の駅有識者懇談会委員」観光庁:「外国人旅行者に対する地域資源の意識調査事業」検討委員会座長、をはじめ省庁の委員を歴任。内閣府地域活性化伝道師。
はじめに
平成5年に初めて設置された道の駅が誕生し、今年で33年が経過しました。道の駅は今や地域の活性化に欠かせない社会インフラへと成長し、観光客の集客や雇用機会の創出、災害時の防災拠点、子育て支援など「地方創生拠点」として改めて大きな期待が寄せられています。
2025年12月現在、日本全国で1,231駅が登録され、旅行者、地域住民、農水産物生産者、地方自治体、道路管理者のすべてのステークホルダーがwin-winとなるビジネスモデルは斬新で多岐に渡り、まさに日本発のユニークな地域マーケティングの事例となっています。今回は政府の最重要テーマの1つでもある地方創生における「道の駅」の役割と課題を整理しながら、地方創生の拠点として進化する「道の駅」の未来戦略を考察します。
道の駅の進化と3つのステージ
道の駅を所管する国土交通省道路局では、未来の道の駅のあるべき姿を模索するため「道の駅有識者懇談会」、「道の駅 第3ステージ推進委員会」を設置、新たな地域創生拠点としての未来像の検討に入っています。
本稿では政府の最重要テーマの一つでもある地方創生における「道の駅」の役割と課題を整理しながら、「地域経済の核として多様化する「道の駅」の未来戦略」を考えてみたいと思います。道の駅が設置され早くも30年以上の年月が経過しましたが、時代背景とともに道の駅の役割も大きく変化し成長してきました。以下に示す様に国土交通省では成長のステージを年代別に3段階に分け分析しています。

(1) 道の駅 第1ステージ(1993年~)
『通過する道路利用者のサービス提供の場』
道の駅が開業した平成5年(1993年)は、日本経済が苦境を迎えた1991年のバブル景気の崩壊の直後の新たな取り組みでした。当時の旧建設省は経済活性化策の1つとして、ドライブ旅行の促進を図るため、高速道路に設置されているサービスエリア・パーキングエリアなどの休憩施設を、一般道にも同様に設ける事として、「通過する道路利用者のサービス提供の場」を設置する事を目的に、トイレをはじめとした休憩機能や道路情報を提供し、自動車旅行が快適なものになる様にと道の駅の骨格が考案されました。
そして1993年に「第11次道路整備五箇年計画」の中で道の駅の具体的な推進方針を打ち出し、道の駅の機能に関しては以下の3つの機能を付帯する事を条件としました。
- 「 休憩機能」=自動車旅行を推進するために一般道においても24時間何時でも、自由に休憩できるトイレ施設を提供する事。
- 「 情報発信機能」=交流人口の促進を視野に地域が外来者と接点をもてる拠点として、該当地域の持つ魅力を情報として提供する事。
- 「 地域連携機能」=道の駅をベースに地域活性化を促進する事。
以上3つの機能を条件に103か所が道の駅としてスタート、この時代を道の駅第1ステージと呼んでいます。
(2)道の駅 第2ステージ(2013年~) 『道の駅自体が目的地』
開設から20年が経過した平成25年(2013年)には道の駅の数は全国に1,014か所、約10倍に拡充されたことになりますが、この20年間の社会環境の変化の中で様々な地域課題に沿った個性的な運営が活発となり大きく進化してきました。
例をあげると地域の物産品販売や地産地消を売りにしたレストラン、農産品の加工を行う体験工房、温泉保養施設、ホテル機能、オートキャンプ、個性的で工夫に富んだ道の駅が増加し来訪者をもてなす「ゲートウェイ機能」を果たす集客拠点に成長し、このころから道の駅自体が旅の目的地として選ばれる事も多くなってきました。
また地域住民のための「小さな生活拠点」として、ワンストップ化された役場機能や防災機能を有し、住民サービスを集約して提供する「地域センター型」の道の駅も誕生してきました。言い換えれば、今や道の駅は「観光」、「産業」、「福祉」、「医療」、「防災」等、地域資源の活用は勿論、地域の様々な課題解決を図るために機能し、地元の小さな経済循環が生まれる地域の核へと進化しました。
中でも特記すべきは2011年の「東北地方太平洋沖地震」発生の教訓から被災地の避難拠点として、正確な災害情報伝達、非常用トイレの提供をはじめ自衛隊の後方支援や戦略基地としての道の駅の活用が注目されました。平常時の観光拠点としての役割、生活と密着した地域創生の拠点としての道の駅の役割に加えて、その活用の範囲と可能性について「道の駅有識者懇談会」では幅広い議論を重ねてきました。

画像提供:一般財団法人日本みち研究所
(3) 道の駅 第3ステージ(2020年~)
『地方創生・観光を加速する拠点』
国土交通省が推進する「道の駅」第3ステージは、2020年から現在まで、「道の駅」を本格的な地方創生と観光を加速する拠点と位置付け、地域デザインに貢献することを目指すと位置付けています。この取り組みは、新たに産学官連携のもとで「道の駅 第3ステージ推進委員会」が設置され、具体的な施策の検討やフォローアップが行われています。目指す目標は大きく以下の3つになります。
「道の駅」の世界ブランド化
国内に止まらず「道の駅」を海外に向けて発信し、日本を訪れる外国人観光客にも「道の駅」を日本ブランドの観光拠点として浸透させる構想です。そのためには全国の道の駅でも更に多言語対応、キャッシュレス決済、周遊観光ルートの検討などを推進していく必要があります。道の駅を拠点にしたその地域の体験ツアー(着地型観光プログラム)の造成など、外国人観光客との接点が無い観光客が通過傾向にある自治体でも、インバウンド観光による観光消費の恩恵に預かる流れを創出する機会に繋げていく事を目指しています。
「道の駅」の防災拠点化
激甚災害が頻発する我が国の防災拠点として、道の駅の防災施設としての機能強化(耐震化、無停電化、通信施設、貯水施設、防災トイレ)等、広域的な防災機能を担う、「防災道の駅」制度を導入し、地域防災計画に位置づけ緊急支援物資の常備や避難所としての機能強化が求められています。
国土交通省では、都道府県の地域防災計画等で、広域的な防災拠点に位置づけられている「道の駅」について「防災道の駅」として選定し、広域防災拠点としての役割を果たすための、ハード・ソフト両面からの重点的な支援を行っています。能登半島地震においても、こうした「防災道の駅」が広域防災拠点として大きな役割を果たしたことなどを踏まえ、「防災道の駅」は既に合計79駅となりました。
「道の駅」の地域センター化
全国に広がる少子高齢化の進行と地方創生は政府の重要課題ですが、道の駅が子育て支援や高齢者の生活支援、そして地域コミュニティの中心となるような多機能な拠点となることを目指すものです。地域センター化の目的は、あらゆる世代(子育て世代から高齢者)が道の駅を舞台に活躍できる環境を整備し、地域の福祉向上や生活課題の解決に貢献します。例えば地域福祉の向上では診療所や役場機能の更なる強化、高齢者住宅などを道の駅周辺に併設し、地域住民の生活を支えるサービスを提供する構想もあります。
更には高齢者や観光客の移動手段を確保するため、道の駅が自動運転サービスの拠点となることを目指し、将来的には地域交通の自動運転サービスのターミナル、大学等との連携による商品開発などを進め、あらゆる世代が活躍する舞台となる地域拠点を目指します。一体で戦略的に連携してコンセプトの実現を成し遂げる取組です。
以上の様に第3ステージのもっとも特徴的な取り組みは、地域の課題を従来の道の駅単体ではなく、行政の総合政策推進の場として位置づけ、地域全体(まちぐるみ)で道の駅をベースに課題解決できる仕組みづくりを推奨する点が特徴です。以上の観点から国土交通省道路局では先進事例を包括的に支援するために『第3ステージ応援パッケージ』を用意し、各駅のニーズに応じた具体的な伴走支援を開始しました。

消費者の価値変化と道の駅の成長
(1) 地域経済に果たす道の駅の役割
道の駅の成長の過程では農林水産品の生産者が個々に努力し、新鮮で高品質な農水産物を直売することで人気を得て売り上げを伸ばしてきたわけですが、それが最近では道の駅を中心に「組織」として地域の消費者のためにより良いものを提供しようという取り組みに変化してきています。言い換えれば道の駅の役割が「ゲートウェイ型」(来訪者のためのもの)から「地域センター型」(地域内の人々のためのもの)へと変化してきたといえます。地域で生産された農水産物をダイレクトにその地域の人々に届け、地域の消費者を支え、また消費者に生産者が支えられている理想的な関係に進化してきました。
(2) 道の駅が全国規模で拡大できた背景と
ビジネスモデルの変化
このように順調にその数や規模を拡大できた理由は、上述した三つの基本機能を有すれば道の駅として登録できることに加え、その他の施設の運営は地元の創意工夫に任され、地域の個性やアイデアで自由な展開を図れる、言わば使い勝手が良い仕組みであった事、またもう一つの成長要因は道の駅の繁盛の裏側には消費者の旅のスタイルの変化があると考察できます。
前述した様に日本の旅のスタイルは、団体型から個人型へ周遊型から体験、滞在、交流型へと変化し、自分自身の趣味やライフスタイルに合わせ、目的を明確にしたオリジナル性の高い旅を好む時代となってきたと言えます。
従来型の観光スタイルは「いつでも、どこでも、どなたでも」という、いわゆる旅行会社が主催する団体旅行、言い換えれば便利で手軽な「コンビニ型の観光」が流行していましたが、現代の旅人の満足度レベルは向上し、「今だけ、ここだけ、あなただけ」をキーワードに、「寿司屋のカウンター型」すなわち、「旅先での今だけの旬に」、「ここの土地だけで獲れた物を」、「 私にだけ特別に提供してくれる旅」を求めています。このように地方の独自性を活かした「ここにしかない」ものを、工夫を凝らして提供しているため、目の肥えたわがままな旅人が満足しうるキーワードが道の駅にはあふれていると言えるでしょう。併せて旬な地域の収穫情報の発信(生産者の顔が見える産直)の仕組みは、今や全国のスーパーマーケットでも見受けられますが、こうした取り組みは道の駅が発祥であり、全国に広がり定番化しました。
また一部の道の駅では旅行業登録を行い自らが企画した地域の旬を生かして体験・交流が出来る観光商品(着地型旅行商品)が開発され、大手旅行会社と提携しながら新たな交流人口の創出に成功している事例もあります。特に注目したいのは、今までは地域で交流する事が無く、近くて遠い距離にあった「地元の生産者」と「地元の消費者」が道の駅をベースに顔が見える関係(トレーサビリティ) に変化し、住民も生活している地域の魅力や素晴らしさに気づき、地域の誇りを持って地産地消が促進されてきています。さらに地元の農家や漁師が収穫はしたものの流通に乗せられず、破棄するしかなかった少量多品種の産品を生産者から道の駅が直接買取り、独自に加工し道の駅オリジナル名産品を開発、加工、販売を行う、いわゆる6次産業化の動きも活発になってきています。


地産地消商品開発と品揃え
画像提供:一般財団法人日本みち研究所
本当の意味の地方創生とは何かを考える
地域経済の空洞化
農水産物においても、一般的に大量流通でコストを下げるいわゆる効率性を追求することが市場で勝ち残る方法であるとされてきました。すなわち農水産物の場合も卸売市場を中心にした大きな流通の仕組みの中で、一次産品の流通と経済を回してきたわけです。
もちろん、このような効率性の追求も否定できませんが、筆者自身、年間50を超える市町村の地域創生の現場へ赴き感じる事は、山間地域で一次産業が主たる経済基盤で成り立つ自治体では、特に上述した旧来の流通システムでは地域から「お金」がどんどん外に流失している事に気が付くものです。当然ですがお金が地域外に出て行けば自ずと雇用も外に出て行く事になり、こうした山間地域では小遣い程度の収入の確保ですら難しい。これが地方雇用の現状でもあります。
すなわち食料を含めて地域内で完結する流通は極わずかで、空洞化した地域経済の構造が浮かび上がってきます。冷静に考えれば、従来の流通では、地元で獲った農作物をJAに出荷して市場から時間と手間をかけてまた地元に戻ってくる。
こうした旧来から継続されている不合理に改めて気づかされるものです。小さな経済を地元で回して行くためには地元で収穫したものを地元で消費(地産地消)すれば当然地元にお金が落ちる事になります。
成功している道の駅の5つの共通点の分析(勝ち組と負け組の差も拡大)
全国1,231か所の道の駅の経営形態は様々であり、当然各駅間でのサービスの質や接客内容に差が生じ、勝ち組と負け組の差が広がっている事も事実です。道の駅数が千箇所を超えた現在、当然駅間の競争は激化してきていると言えます。ここでは人気の道の駅(繁盛駅)の共通ポイントを簡単に整理してみました。
〈ポイント〉
- 徹底的に地域産品を集める事。すなわち地産地消で地域の独自性を演出している事。
- 経営者が自ら消費者が何を求めているのかを売り場に立ってリサーチする事。
- 消費者に販売しているその商品の付加価値をわかりやすく伝える事。
- 行政と店舗運営者および市民が連携して新たな道の駅の価値を作り上げている事。
- 地元産品の6次産業化にチャレンジして独自のブランド商品を開発している事。
以上が人気の道の駅に共通している5つのポイントです。その他、調査から見えてきた特記すべき事は、人気の繁盛駅の共通点は当初は「ゲートウェイ型」の道の駅(来訪者のためのもの)を目指していましたが、様々な地域向けの商品開発や仕掛けを行い「地域センター型」の道の駅(地域内の人々のためのもの)へその業態を変えている点にあります。
中でも駅全体の売り上げの60%以上を地元の消費で賄えている駅は、不思議と後から来訪者が増大し、駅全体の売り上げが向上している事が来訪者のアンケートから、わかってきました。理由は地元の消費者が生き生きとした生活感の漂う雰囲気の中で、買い物をする事に魅力を感じ、その雰囲気の中で地域を楽しむ事により不思議と消費意欲が高まり、財布の紐も緩くなる傾向があるからです。
まとめ
本稿では前半で時代別に道の駅の進化の歴史を考察しながら、道の駅を所管する国土交通省道路局の最新の戦略を、後半では筆者が全国の道の駅をベースに調査した、現場からのレポートを含め、地方創生拠点として進化する「道の駅」の未来戦略を整理しました。変化が激しい現代の環境にしなやかに対応し、2030年に向けて道の駅のあるべき方向性を明確に定め、社会状況の変化や多様なニーズに対応できる新たな社会インフラとしての更なる機能を拡充していただけたら幸いです。
<出典>
1.道路新産業開発機構 TRAFFIC&BUSINESS NO109 篠原靖(単著)
『「道の駅」に求める姿や課題』より引用
2.国土交通省「道の駅」第3ステージ推進委員会資料
3.第3ステージ中間レビューと今後の方向性資料
4.2025年国土交通省道の駅シンポジウム 道路局企画課評価室小山健一室長プレゼン資料