
CONTRIBUTOR
株式会社南山城
代表取締役
森本 健次(もりもと けんじ) 氏
はじめに
京都・大阪市内から約1時間半。京都府の東南端に位置し、三重と奈良、滋賀に隣接する南山城村。南北の山が挟み込むように中央を横断する木津川の流れがあります。その急峻な山々にパッチワークのように張り付くような茶畑、朝晩の寒暖差、木津川の川霧や土壌等、茶の栽培に適した条件が、京都の一大茶産地として日本茶の高級ブランド「宇治茶」を支えてきました。
永谷宗円が18世紀に確立した「宇治製法」をルーツとした上質煎茶の生産地で、古くから上質な茶が生産されてきました。その品質は、京都や関西の茶品評会等でも一等一席を受賞するほど。村の人たちにとってお茶は、「南山城村と言えばお茶」とほとんどの人たちが答えるようなシンボリックな存在となっています。
最強道の駅ランキング全国1位
2017年4月開業の道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」は、道の駅&サービスエリア最強ランキング2026-27で全国ランキングNo.1になり、2024年版に続き二連覇となる等、スイーツを中心に南山城村産のお茶を使ったオリジナル商品を求め、年間約60万人の来場がある人気の施設となっています。弊社は南山城村が出資するいわゆる第3セクター。
設立当初より、代表取締役に就任しています。第3セクターは自治体関係者や地元経済界の幹部が社長になるケースがほとんどで、弊社はレアケースだと思います。経営責任を持つ人間が経営の現場に居るというのはごく当たり前ですが、その当たり前をずっとやっています。役場時代に築いた地域の人脈は、「お前がやるなら応援する」というように、生産者さんや村の人たちが支えてくれました。
今や南山城村の名物といっても過言でない、「村抹茶ソフトクリーム」や「むらちゃプリン」も、生産者さんの上質なお茶の供給があって実現すること。宇治茶の影に隠れ知られていなかった南山城村のお茶を、そのこだわりを自社商品のスイーツを中心に村むらちゃ茶としてブランディングしてきた結果、さまざまなメディアでも取り上げられるようになり、お茶の産地として知らしめることができました。その商品開発もいろんなスキルを持つスタッフが上質なお茶を活かした商品開発に取り組んでくれているからこそ。

道の駅のレジ通過者数は年間60万人以上。今では、売れないと言われたお茶をわざわざ買いに道の駅に来たという人も少なくはなく、生産者さんも道の駅で小売り機会ができたことは、季節変動はあるにしても農業経営の面でも、生活面でも安定的な収入が確保できること、何より生産者さんが個々の名前で思い思いの金額で販売できることに喜びを感じていただいています。
こうした取り組みが、道の駅をくまなく周るプロに認められ、とある出版社の一つの企画ではありますが、最強道の駅ランキング全国1位に輝いたのです。

消滅可能性都市全国17番目のレッテル
道の駅はお茶を使ったスイーツが多くの人に知られるようになり、その取り組みは地方創生の成功例として、様々なメディアに取り上げられることも少なくはありません。道の駅整備の背景には、少子高齢化や人口減少等の社会問題を、道の駅を拠点としたむらづくりで解消していこうという背景がありました。
現在の南山城村は人口約2,300人のいわゆる過疎の村。関西地方の中心部に立地し、関西学術研究都市から30分圏内にありながら、過疎化と高齢化が深刻な問題となっているいわゆる中山間地域。高齢化率も50%を超え、平成26年に発表された消滅可能性都市では、全国で17番目に消滅する可能性がある自治体としてレッテルが貼られることとなり、村に悲観的なムードが漂いました。
南山城村の生業の中心としてきた茶業も、今でこそ近年の抹茶の海外需要の高まりで好調ですが、茶葉の消費低迷や後継者不足も深刻な状況であり、人口問題も含め社会問題先進地といっても過言ではない状況の地域でした。
そんな中、道の駅整備事業は村の再生をかけたプロジェクトとして位置づけられたのです。

魅力あるむらづくりプロジェクト
消滅可能性都市が発表された2014年当時、私は南山城村役場の職員。2010年から当時の村長特命の魅力ある村づくりプロジェクト担当として、進行する少子高齢化の中、道の駅整備を軸に、茶業振興や移住促進、高齢者生活支援等の課題を与えられ、従来の取り組みに横断的視点から新たな取組を上積みした戦略をつくる、いわゆる地方創生担当となり、道の駅整備に取り組むことになったのです。
特に移住促進では地域コミュニティと移住希望者をマッチングし、一定成果をあげていた頃で、レッテルとは裏腹に希望を感じていた頃でした。
農業振興においても、生産者とともに南山城紅茶プロジェクトを立ち上げ、宇治茶の産地ではじまった紅茶づくりとして注目を浴びることになりました。「つくること以外はできない」という生産者と、つくること以外をやるプレイヤーをつくることが、生産者の支援体制となる。生産から販売まで一貫して行える体制づくりは、道の駅お茶の京都みなみやましろ村の地域商社の取組の基が生まれたのでした。こうした経験が再生への希望を感じる根拠になっていくのです。
行政より公益を担う株式会社をつくる
道の駅整備事業では、単なる土産物を売る休憩施設ではなく、地域商社機能を持つことで大きな意味を持ち、村に必要なことを村の人が取り組み、村の人が利益を享受するという仕組みづくりを目的として掲げたのでした。
弊社の企業理念は「村で暮らし続けることを実現する」。村は「南山城村」という地方公共団体の名称というだけでなく、近代化以前の自然村のように、生活の場となる共同体の単位として捉え、人口減少下でコミュニティをどのように再構築するか。プレイヤーが乏しい小規模自治体で、例えば生産に特化してきた茶業に、我々が茶の付加価値を生み出す取組をすることで産業振興に繋がる。
また、道の駅の物販という機能で買い物等、高齢者の生活支援に繋がるサービスが、村での暮らしが継続できる仕組みづくりになるという思いを込めています。
「行政より公益を担う株式会社をつくる」という思いは、このように性質上限界ある行政サービスの域を越え、我々がパートナーとして連携し取り組む公益、すなわちみんなのことに取り組むことで、村で暮らし続けることが実現すると考えています。南山城村の道の駅の取組はその土台をつくり、何より村人の希望の光をつくることができたと思います。
