~北海道・平取町の観光協会が、積丹町の企業とタッグを組んでクラフトジンづくりに挑戦。原料にこだわって表現した「平取らしさ」とは。~

INTERVIEW
一般社団法人平取観光協会
事務局長
斉藤 忍(さいとう しのぶ) 氏
「『PORO SIR』の箱のアイヌ文様は工芸家の髙野啓子さんがデザイン。「ボトルを傾けると幌尻岳のシルエットが見えます」と斉藤さん。
町に自生するカラハナソウを発見クラフトジンづくりの挑戦がスタート
平取町は、新千歳空港から車で約1時間、日高地方の西端に位置する町です。私たちびらとり観光協会は、町役場の観光商工課と連携しながら、観光宣伝や道内外へのPR 活動を行っています。
平取町は山間部にあり、畜産業や農業が盛んです。「びらとり和牛」や「びらとりトマト」といった特産品があるものの、お土産品として気軽に買えるものが少ないという課題があり、“ 平取町らしい商品の開発” が常に私たちの頭の中にある状態でした。
そんな折、町内に野生のカラハナソウ、いわゆるホップが自生していることを知ります。何かに活用できないかと考えていたところ、ちょうど積丹町の蒸溜所である( 株) 積丹スピリットの皆さんとお話しする機会をいただきました。
積丹スピリットは、自社で育てたハーブやスパイスを原料にクラフトジンを製造しており、企業のOEM も多数手掛けています。そこで採取したカラハナソウを同社の岩井社長に見ていただいたところ、「ジンの原料として活用できる」と評価していただきました。そこから原料の選定や調整を進め、ふるさとものづくり支援事業への採択を受けて、クラフトジンづくりへの挑戦が始まります。

ホップはビールの原料というイメージがあるが、より長期保存のきくジンを選んだという。
アイヌ文化を伝えるボタニカルを選定町にそびえる幌尻岳を商品名に
どのようなジンを作るか検討する中で、「アイヌ文化を表現するようなジンにしたい」という思いが強まりました。平取町にはアイヌ文化が色濃く残り、町内の二風谷地区から望む幌尻岳は、かつてアイヌの人々の信仰の対象でもあった山です。その歴史と文化への敬意を込め、商品名を「PORO SIR(ポロシリ)」と名付けました。
野生のカラハナソウに加え、メインボタニカルには、アイヌ文化の中でかつて胃腸薬としても用いられていたキハダの内皮を採用。さらに、道民になじみ深い行者ニンニク、ヨモギ、近代産業を象徴するびらとりトマト、酒米由来の白糠など、平取町らしい原料を積丹スピリットに託し、「平取ボタニカル」として調合していただきました。
原料集めには苦労もありました。カラハナソウは時期を逃すと変色してしまうため、採取のタイミングが重要です。また、キハダは生息数が少ないため山中を探し回り、土地の管理者を確認したうえで採取許可を得る必要がありました。さらに、使用するのは樹皮のみなので、残渣処理について林業事業者に相談するなど、多くの調整を重ねました。
「PORO SIR」の開発で指揮を執ってくださった積丹スピリットの岩崎さんは、「平取のアイヌ文化を現代に表現すること」をイメージしてボタニカルを組み立ててくれたそうです。香りの強い行者ニンニクが主張しすぎないよう、トマトや白糠でまろやかさを生み出す味わいに仕上げていただきました。試作を重ねて完成したクラフトジンは、キハダの爽やかな香りを中心に、香りと味わいが見事に調和した一本となっています。


次なる新商品の開発にも意欲町全体で魅力発信に取り組みたい
現在は、町内の温泉施設や観光協会のEC サイトで商品の販売をしています。札幌で物販を行った際には若い方々にも興味を持っていただき、「行者ニンニクの香りを感じる」「スパイスが効いていて良い」「今までにない味わい」といった声をいただきました。びらとり和牛との相性も良く、また甘いものにも合うと思うので、将来的には「PORO SIR」に合うスイーツの開発にも挑戦してみたいです。
今回の取り組みを通じて、農協や農家、林業関係者、町役場の各課など、多くの方々と関わったことで、相互理解がより深まったと感じています。そして、「平取町の魅力やアイヌ文化の発信は、町全体で取り組んでいくべきものだ」という認識も共有できたのではないでしょうか。
おかげさまで「PORO SIR」は初回ロットが地元販売店で200本近く販売され、次のロットに向けた原料も確保できています。今後も継続し、平取町の定番のお土産品になるよう育てていきたいです。さらに、原料となるカラハナソウやキハダの栽培など、取り組みが新たな仕事や雇用の創出につながることにも期待しています。今回学んだ経験を生かしながら、これからも平取町の魅力を広く発信していきたいと思います。

自治体担当者

平取町 まちづくり課
地域戦略係
係長
瀧 直也(たき なおや) 氏
町担当者として、本町では観光振興と交流人口の拡大を重要施策と位置付け、びらとり観光協会と連携しながら地域の魅力発信に取り組んでいます。このたび開発されたクラフトジン「PORO SIR」は、未活用資源であるカラハナソウをはじめ、アイヌ文化に由来する行者ニンニクやキハダ、ヨモギ、さらに基幹産業である農業のトマトや地酒製造の副産物である白糠など、本町の多様な地域資源を活用した商品です。
これらを組み合わせることで、地域文化と産業の融合による新たな付加価値が創出されており、観光資源としての魅力向上に資するものと評価しています。
今後の販路拡大により、本町の認知度向上や地域経済の活性化、さらには雇用創出への波及効果が期待されます。
一般社団法人びらとり観光協会
〒055-0107
北海道沙流郡平取町本町28番地
TEL:01457-3-7703
業務内容
平取町(北海道沙流郡)の観光振興、PR

地元探訪
平取町は北海道日高地方の西端に位置し、形はやや北海道に似た三角形状のまちです。豊かな自然とアイヌ文化の拠点の1つのまちとして広く知られ、産業はトマト栽培等の農業を中心として健康で豊かに暮らすことができるまちづくりを目指しています。

昭和47年に第1回チㇷ゚サンケを開催して以来、今年で57回目を迎えるに至った本事業は、地元で開催されるアイヌ文化を守り伝えていくための数少ない貴重な伝統行事です。毎年、全道、全国各地から数多くの観光客とアイヌ文化研究者が訪れています。また、チㇷ゚サンケの前には安全を祈願し、カムイノミと古式舞踊が披露され、その魅力を広く発信しています。
※チㇷ゚サンケ・・・アイヌ語で「舟おろし」を意味し、古来から伝わる技法で作られた舟に魂を入れる儀式。
※カムイノミ・・・神々に祈りを捧げる儀式。

びらとり和牛・トマトまつりは、平取町の特産品である「びらとり和牛」と「びらとりトマト」を主役とした、町を代表する食の祭典です。会場では、びらとり和牛を味わうバーベキューコーナーが人気を集め、炭火で焼き上げる和牛の香ばしさと旨みを存分に堪能でき、平取町の“ 食” を満喫できる内容が盛りだくさん。毎年町内外から多くの来場者が訪れ、秋の平取町を彩る恒例イベントとなっています。
この事業で活用された補助金はこちら
企業等の地域資源を活用した新商品開発等に対し市町村が支援を行う場合に、財団が当該市町村に対し補助金を交付することで、地域産業の育成・振興に資するよう地域における投資や雇用の創出を促進するものです。