ふるさとクローズアップ 熱狂の共有が、地域の防災力になる  - 西条まつり「Omatsu-Reboot CAMP」の挑戦

えひめ西条つながり基金
事務局長
安形 真(あがた まこと)氏

1 豪華絢爛な祭りの裏に潜む「静かな危機」

 愛媛県西条市の「西条まつり」は、300年以上の歴史を誇る街のアイデンティティです。約150台のだんじりや太鼓台が練り歩く規模は日本随一ですが、その裏では「静かな危機」が進行しています。

 一つは、祭りを支える伝統工芸職人の減少です。老舗の提灯店が廃業するなど、祭りのインフラが足元から揺らいでいます。もう一つは、若者の流出による担い手不足です。道具を作る手と、それを担う肩。この双方が失われつつある現状に対し、私たちは新たなプロジェクトを立ち上げました。

▲300年以上の歴史を誇る「西条まつり」の様子

2 能登の教訓から学ぶ「フェーズフリー」な関係

 私たち「えひめ西条つながり基金」が祭りの継承にこだわる理由は、「フェーズフリー」という考え方にあります。これは平時の楽しみを、有事の備え(共助)へとつなげる概念です。 令和6年能登半島地震では、祭りのつながりが復興の精神的支柱となりました。

 しかし西条まつりの現状を見ると、参加者の多くは縁故関係に限られていました。これは決して排他的だからではありません。危険を伴う祭りの運行に支障をきたさぬよう、素性の知れた「安心できる人」だけを受け入れてきた結果です。

 つまり、信頼関係さえ担保できれば、地域は外部の若者も歓迎したい(ウェルカムな)想いを持っていたのです。そこで私たちは、この「信頼の入り口」を公に作り、祭りを「関係人口を創る防災インフラ」へ転換することを目指しました。

3 「Omatsu-Reboot CAMP」:祭りを共創の場へ

 地域の活力を維持する鍵は、観光以上・定住未満の「関係人口」にあります。そこで始動したのが、外部人材を「共創者」として迎える「Omatsu-Reboot CAMP」です。お祭りをリブート(再起動)するという目的で、令和6年の8月頃からスタートしました。

 初年度は内閣府のモデル事業として、9名の参加者が約3ヶ月間地域に深く入り込みました。彼らは外部視点から、伝統踊りの後継者育成インターンシップや、職人技術のプログラム化、デジタルガイドの構築など、100年先を見据えた具体策を提言しました。

4 補助金からの脱却と「熱狂」への回帰

 2年目、事業は補助金頼みから地元企業の協賛金による「自走型」へと移行しました。予算が限られる中、機能を「担い手マッチング」に絞り込み、参加者と住民の「事前対話」を重視しました。

 結果として、この形こそが持続可能な解でした。受入地域は8地域へ、参加者は17名へと拡大。理屈抜きに同じ法被を着て、重いだんじりを共に担ぎ上げる「熱狂の共有」が、強固なエンゲージメントを生んだのです。「また来年も来てくれ」と涙ぐむ住民の姿は、信頼できる仲間として受け入れられた証でした。

5 「人」と「金」の両輪で支える未来

 一度熱狂に巻き込まれた参加者は、もはや単なる観光客ではなく、地域を支える「ファン」です。今後はこのファンベースを広げつつ、同時に「資金」の壁にも挑みます。だんじりの修復には多額の費用がかかりますが、住民負担は限界です。そこで私たちは、寄付に税制優遇が適用される「まつりのチカラ応援基金」を創設しました。これは公益財団法人だからこそ提示できる解決策です。

 「人」を呼ぶキャンプと、「金」を循環させる基金。この両輪が噛み合ったとき、西条まつりは強靭な地域インフラへと進化します。私たちの挑戦が、日本の地域文化継承の希望あるモデルになると確信しています。

西条市
産業経済部 観光振興課
観光推進係 主事
赤堀 亮太
(あかほり りょうた) 氏

 愛媛県西条市は、持続可能な社会の実現に向けて、地域課題の解決につなるチャレンジを支える、あらゆる地域資源を活かす地域内循環の仕組みづくりとして、西条市版ローカルファンドを推進しています。

 このようなこのような中、市民主体で公益財団法人えひめ西条つながこのよう設立され、地域で生まれるチャレンジに対する支援がなされています。この市民や団体、企業等と連携し、人とのつながりを大切にするさまざまな取組は、本市が目指している協働のまちづくりに寄与するものです。

 また、本市では、毎年10月中旬に五穀豊穣を感謝する神事としてだんじり・御輿・太鼓台といった屋台を各所の神社に奉納する秋祭りが開催されています。

 中でも、嘉母、石岡、伊曽乃、飯積の4つの神社による祭礼は「西条まつり」と総称され、市外からも多くの人が訪れています。

 祭礼の主役となるのは、氏子町内ごとに制作された屋台で、だんじりは彫刻が、御輿、太鼓台は金糸の刺繍による装飾が細かく施されており、その数は市内で百数十台にも及びます。武者絵や花鳥等の彫刻、昇り龍・降り龍等の刺繍など、それぞれ特徴あるデザインで彩られた屋台は、太鼓や鉦かねの音に合わせて勇ましく練り歩きます。

 市内で最大規模の伊曽乃神社の祭礼では、約80台の屋台が奉納されます。毎年10月15日・16日の2日間にわたって開催され、両日とも御旅所に午前2時頃から屋台が奉納され、数十台の屋台が提灯の灯かりに照らされた姿は幻想的です。

 祭礼のクライマックスとなるのは16日夕刻に行われる「川入り」です。加茂川の河川敷に約80台のだんじりが勢ぞろいし、神様が乗る神輿が伊曽乃神社へ戻るための渡御を見送ります。別れを惜しむだんじり数台が川の中で神輿を取り囲み、宮入りを阻もうとする様子は、西条まつりならではの光景です。

 西条まつりは、全国的にも注目される祭りとして紹介されることが多く、地元企業や学校が休みになるほど西条市全体が盛り上がる期間でもあります。市外、県外に住んでいる出身者も帰省するなど、まさに地域の誇りと伝統を感じられる行事となっております。

 令和7年度で3年目の担当となりますが、祭礼期間中は多くの人が訪れ、10月中旬は町全体が祭り一色となり、地域と人とがつながっていることを強く感じております。このように町と地域、人が一体となって行っている伝統ある神事が江戸時代から続く今も残っているということを誇りに思い、これからも大切にしていきたいと思います。

 これまでにも当団体は伝統文化や技能の後継者育成に取り組まれており、今後も地域資源を活かした取組による関係人口の創出に期待しております。

川入り

御旅所