ふるさとクローズアップ-関係人口の創出・拡大に向けて地域と関係人口をつなぐ

石川県企画振興部地域振興課
移住定住推進グループ
主任企画員 田島 幸祐
     (たじま こうすけ)氏


1 はじめに

 石川県は北陸地方の中部に位置し、11市8町、計19の市町で構成されています。日本海に面したこの地は、豊かな自然と歴史文化が調和し、四季折々の美しさで多くの人を魅了しています。


 北部の能登地域では、里山里海の風景や伝統的な暮らしが今も大切に守られ、白米千枚田や千ちりはま里浜など、地域ならではの景観が広がります。県の中心に位置する石川中央地域には金沢市があり、藩政期から受け継がれる伝統文化と現代的な街並みが共存しています。生活の利便性と自然環境のバランスが取れた、暮らしやすい地域です。


 南部の南加賀地域には、加賀温泉郷をはじめとする名湯や九谷焼などの伝統工芸が息づき、文化と自然が調和した心豊かな暮らしが広がっています。

2 震災による人口流出と、関係人口創出への転機


 令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、最大震度7を観測し、奥能登地域を中心に深刻な被害がもたらされました。この震災の影響により、石川県では人口流出が加速しています。


 地震発生時点の県人口は1,107,848人で、前年からの減少率は0.7%でしたが、1年後には1.0%減の1,096,721人となり、減少幅が拡大しました。特に被害の大きかった奥能登4市町では、震災後1年間で8.5%もの人口減少が見られ、地域の持続性に深刻な影響を及ぼしています。


 県ではこれまで、移住促進に向けた魅力発信や相談会の開催など 、さまざまな取り組み進めてきましたが 、震災のあった令和5年度には、初めて前年度比で移住者数が減少に転じ、現在もその回復には至っていません。 復旧・復興を進め、地域に再びにぎわいを取り戻すためには、移住施策とは異なる新たなアプローチが求められています。

3 関係人口の創出・拡大に向けて

 県では、こうした状況を受け、「移住」に限らず、地域に関心を持ち、さまざまな形で地域づくりに関わる「関係人口」の存在に注目し、関係人口の創出・拡大を、能登の創造的復興プランにおける「リーディングプロジェクト」として位置づけ、地域の活力を維持・向上させるとともに、復興を支える柱の一つとして、県内外の人々が多様な形で地域と関われる仕組みづくりを県内全域で進めています。


「 いしかわのW a !」の運用開始
 その取り組みの一環として、“地域”と“関係人口”をつなぐポータルサイト「いしかわのWa!」の運用を令和7年11月から開始しました。


 このサイトでは、地域と関わりたい人が自分に合った活動や地域を見つけられるよう、プログラムのマッチング機能を備えています。運用開始に合わせて、広報媒体による周知や首都圏などでのイベントを通じて登録を呼びかけるとともに、地域住民との交流プログラムを造成・運営する人材の育成など、市町や地域での受入体制づくりも進めています。


 その結果、令和7年12月末時点で登録者数は780名を超え、多くの方が石川との新たな関わりをスタートさせています。参加者は地域の人々と出会い、共に活動する中で石川とのつながりを深めています。こうした取り組みにより、関係人口の創出・拡大を図り、地域に新しい風を呼び込むとともに、復興に向けた歩みを力強く後押ししています。


いしかわのWa!のイメージ

いしかわのWa!プログラム例:被災地での
子供向けイベントの運営


「いしかわサテライトキャンパス」の推進
 石川県では、豊かな自然や文化、そして地域の人々とのつながりを生かし、学生がフィールドワークや地域活動を通じて学びを深める「いしかわサテライトキャンパス」も推進しています。学生たちは、地域の課題や魅力に直接ふれながら、現場で実践的な学びを得るとともに、地域に新たな視点や活力をもたらしています。


 例えば、令和7年度は、能登において、首都圏の大学生が地域の方と協力して秋季祭礼の手伝いや里山の修復作業等を行っており、令和7年12月末時点で、約820名の学生の受け入れを予定しています。若い世代が地域と関わる機会を創出することは、関係人口の裾野を広げるとともに、復興の歩みに多様な力を呼び込む重要な一歩となっています。

いしかわサテライトキャンパス
推進事業活動の様子

3 関係人口の創出・拡大に向けて

 「いしかわのWa!」をはじめとする石川県の関係人口創出・拡大に向けた取り組みは、まだ始まったばかりです。今後は、ポータルサイトのさらなる周知を図るとともに、県内外に向けて石川の魅力や多様な関わり方を積極的に発信していきます。


 あわせて、地域側においても、関係人口を温かく迎え入れ、共に活動できる環境づくりを進めていきます。 人と人とのつながりが、未来の地域づくりの礎となり、復興の力となるよう、官民一体となって取り組みを深めていきます。

いしかわのWa! QRコード

代表取締役社長 

高橋 博之(たかはし ひろゆき) 氏

プロフィール
昭和49年、岩手県花巻市生まれ。青山学院大卒。岩手県議会議員を2期務め、政界引退。
平成25年NPO法人東北開墾を立ち上げ、地方の生産者と都市の消費者をつなぐ、世界初の食べもの付き情報誌「東北食べる通信」を創刊し、編集長に就任。
平成27年当社設立、代表取締役に就任。令和6年3月には、「石川県令和6年能登半島地震復旧・復興アドバイザリーボード」の委員に就任。令和6年11月には、内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部が開催する「新しい地方経済・生活環境創生会議」の有識者構成員に、令和7年6月には一般社団法人日本ファームステイ協会理事に就任。

 石川県の「関係人口」登録システム、「いしかわのWa!」は、国の「ふるさと住民登録制度」に先駆ける取り組みで、元々は能登復興への寄与も期待されて始まりました。また、能登以外の過疎地域でも、慢性的な担い手不足が問題となっており、そうした地域の振興にも期待されています。


 特徴としては、能登を含む県内19市町全域にわたり、自然とのふれあいやコミュニティ支援、地域文化系など、魅力的で多様なプログラムが掲載されているところです。石川好きの県内外の方々が「サポーター」として登録し、プログラムに参加申込できます。イベント参加やアイデア提供など、様々な関わり方で、地域の課題や復興を一緒に支えていきます。


 震災などによりもともと住んでいた地域からやむを得ず離れて二地域居住されている方も登録対象としており、地域との関係性維持にもつなげます。就職や進学で故郷を離れる若者たちとの関係維持にも有効です。この登録システムによって、各自治体で「サポーター」一人一人の関わりを踏まえて、個別に様々な支援策を考えていくことができるようになります。住民側から見れば、地域に残っている人だけでやる「住民自治」から、地域に思いを寄せる内外の人が一緒になってやる「関係自治」への転換の契機にもなります。今後の展望については、関係人口が関わり続け、関係性を深めていくために、官民で仕組みづくりをしていく必要がありますが、そのために関係人口の情報の一元化は非常に重要です。「いしかわのWa!」を県内の様々なプレイヤーに幅広く使ってもらうことで、多様な関係人口の関わりを網羅し、共通データべースとなっていく展開を期待します。


 震災や豪雨災害があった時に支援に駆けつけたり思いを寄せてくれたりした方々も、年月が経つ中でどうしてもコミュニケーションが減り、距離が生まれてしまいます。「いしかわのWa!」が、離れていても関わり続けやすい間口となることで、せっかく生まれた絆・つながりからの未来の芽を絶やさず育てていくことができると思います。また、市町に共通して負荷になる部分を県が補完的にサポートしていく良いモデルでもあり、引き続き市町の意見を十分に聞きつつ、国が準備するふるさと住民登録制度ともしっかり連携していく必要があると思います。


 関係人口の一番のコアプレイヤーは出身者。石川出身の方、県外に出る若者などに広く参加してもらえるような仕掛けを考えていく必要があります。細部まで詰めたようなプログラムだけでなく、地域団体側も関係人口側も、ハードルが低く、コストもそこまでかからない形での登録が増えていってほしいです。例えば、日頃の地域活動やイベントに少しの工夫で受け入れることができ、関係人口側も気軽に参加できるようにするなど。参加した関係人口が仲間として加わっていけば、さらにできることも増えるので、まずは広く交流を生み出し、関係の深まりにつなげていくことを目指していくことが重要です。