随感随筆‐届けることで、地域は変わる。産官学で生かす「言」の力

学校法人先端教育機構
事業構想大学院大学 学長
田中 里沙(たなか りさ)氏

 全国で地方創生に邁進されている皆様、日々のご尽力に心より敬意を表します。少子高齢化や人口減少が進む中、それぞれの地域が持つ固有の歴史、豊かな自然、そして温かいコミュニティを次の世代へつなぐことは社会全体の願いです。

 しかし、どんなに素晴らしい地域資源があっても、また、どんなに革新的な施策を打ち出しても、それが関わる人々や世の中に正しく伝わり、心を動かすことができなければ、持続可能な成果へと結びつけることは困難です。地方創生の現場において、いま最も求められているもの。それは、広告・広報・メディアが持つ「言(ことば)の力」を戦略的に活用することです。

 地域の優れたコミュニケーション活動を顕彰する公益社団法人全日本広告連盟の「鈴木三郎助全広連地域広告大賞」では、クリエイティブの力で地域の未来を切り拓こうとする熱意あるチャレンジの成果が数多く評価されています。今年の受賞作の一つである秋田魁新報社(あきたさきがけしんぽうしゃ)の「秋田活性化選手権」は、その象徴的な事例です。地元の学生たちが地域を深く見つめ直し、自由で斬新な活性化のアイデアを創出しています。

 特筆すべきは、それが単なるアイデアコンテストで終わることなく、地元のメディア、行政、企業、そして教育現場が一体となり、「実際の事業化や商品化」へ向けて伴走し、具体的な実績に結びついている点です。学生たちの夢や希望、純粋な想いを、メディアや広告が有する「表現力」や「発信力」という「言の力」で包み込み、社会へと届ける。それによって地域社会が巻き込まれ、本気のプロジェクトへと昇華していきます。情報発信と情報共有が地域を動かす、リアルな証明です。

 そして、この「言の力」をさらに大きな地方創生の効果へと進展させるための鍵が、産官学の緊密な連携です。行政が持つ「地域の確かな課題意識と公共性」に、学校や研究機関の「客観的な視点と論理性、若い世代の柔らかな知性」を掛け合わせる。そこに、メディアや企業の広報等が得意とする、クリエイティブな表現力と、情報を広く届ける発信力が融合したとき、地方創生は爆発的な推進力を得ます。

 広報・宣伝は、地域のために、現場で一生懸命頑張ろうとする人たちを応援し、その背中を力強く押すための機能でもあります。縦割りを越えた一つのチームとなり、「地域の魅力をどう定義し、誰に、どう届けるか」を徹底的に議論し実践することはとても大切で、このプロセスそのものが、関係人口の拡大や移住促進といった、さらによい効果を生み出す王道にもなり得ます。次の時代を作る挑戦の伴走者として、共に悩み、考える仲間を増やすことは、地域の大きなエネルギーになるはずです。