「なぜ?」が芽生える。「知る」を楽しむ。~対話と交流により、奈良の魅力を五感で感じ、新たな知性・感性を育む~

なら歴史芸術文化村
村長 平田 千江子(ひらた ちえこ)氏

はじめに

 はじめに「なら歴史芸術文化村」(以下、「当施設」又は「文化村」)は、文化・地域振興に資する地方創生の拠点として奈良県が整備し、令和4年3月にオープンした県立の多機能複合施設で、奈良県内16番目の道の駅として登録されています。

 当施設が所在する天理市は、東大寺や興福寺、春日大社などを含む世界遺産「古都奈良の文化財」がある奈良市の南に隣接しており、また、世界遺産登録を目指している「飛鳥・藤原の宮都」(橿原市、桜井市、明日香村)にも近く、施設の周辺には日本最古の道といわれる山辺の道や多くの古墳・遺跡、社寺等があり、奈良の歴史と文化や自然に囲まれた風光明媚な場所にあります。「文化財修復・展示棟」「芸術文化体験棟」「交流にぎわい棟」「情報発信棟」の4棟で構成され、同一敷地内には民設民営のホテルも併設しています。

なら歴史美術文化村

設立の背景と経緯

 奈良県は数多くの有形・無形の歴史的文化資源を有しており、それらの保存・継承・活用や文化活動の振興に向けた取組を進める中で、平成26年から文化振興を目的とした新たな施設の整備に向けた検討が始まりました。

 翌年には県内外の有識者で構成する検討委員会を設置し、以来令和3年度の開村まで、施設のコンセプトや内容、運営方法等について検討が行われました。それとともに県庁内の部局横断プロジェクト会議や県議会、地元天理市や県内関係者との会合など、様々な場で議論を重ねながら施設整備の推進を図りました。

 このような取組を経て、歴史、芸術、食と農といった奈良県が誇る文化に触れることができる施設という枠組みがつくられ、ここに賑わいの創出、地域振興という要素を加えて、多機能複合施設としての構想が整っていきました。

 さらに、奈良県では、歴史文化資源の継承と活用、文化活動の振興を両輪として、県の特性を活かした心豊かな県民生活及び活力ある地域社会の実現に資することを目的とした「奈良県文化振興条例」を令和3年4月に制定しましたが、その中で当施設が県の文化振興の推進拠点として位置づけられました。そして令和4年3月21日に「開村」を迎えました。検討の開始から開村まで、実に8年の歳月を要したことになります。

活動理念等

等施設は、奈良ならではの豊かな歴史文化資源の活用、文化・芸術の振興、地域の活性化という3つの側面において先駆的拠点となることを目指しています。これらを達成するための活動理念として、「①当施設を訪れる方々( 以下、「来村者)」との対話と交流を重視した双方向のプログラムにより、来村者との交流を重視した取組を展開し、一人ひとりの感性や知識、関心に寄り添い、自発的な学を支える。」「②文化村近傍だけにとどまらず、山辺の道等、関連する地域を一体としてとらえた地域振興策を展開する。」「③文化村における取り組みの質の向上のため、多種多様な分野の人脈を構築する。」を掲げています。「『なぜ』が芽生える。『知る』を楽しむ。」を活動のテーマとして、「①文化村でつながる、文化村から広がる」「②来村者にやさしい文化村で、楽しい体験」「③文化村でみんなが学ぶ」を「3つのこだわり」(活動指針)として、様々な分野の活動に取り組んでいます。当施設の名称は、歴史文化と芸術文化の両分野にわたる施設であるという特色を表すとともに、「村」とすることで様々な人が集い多岐にわたる取組を行う場であることを表現しています。

施設概要

 先に述べたとおり、当施設は4つの棟で構成されています。「文化財修復・展示棟」では、日本で初めて文化財4分野(仏像等彫刻、絵画・書跡等、歴史的建造物、考古遺物)の修復工房を通年で公開しており、来村者と学芸員が対話しながら工房を見学するツアーも毎日開催しています。

 また、文化財をより深く知ることのできる様々な体験型ワークショップも随時実施しています。

文化財修復・展示棟


 「芸術文化体験棟」では、アーティストが当施設に滞在して制作活動をする中で来村者と交流したり、誰もが気軽に芸術文化に触れることができる体験型プログラムを実施するとともに、未就学児を対象とした幼児向けアートプログラムも展開しています。また、県内外の方々が芸術文化活動等を行う場として活用される多目的ホールやセミナールームも備えています。

芸術文化体験棟

 「交流にぎわい棟」には、奈良県産の農作物や工芸品を販売する直売所があり、季節に応じてイチゴや柿、三みわ輪そうめん等の県特産品の販売や、吉野杉などの県産材を使った木材加工品が人気です。また、県産食材を使った料理を提供するレストランもあります。さらには、調理実習室や多目的室も備えており、食や農、伝統工芸に関するセミナーやワークショップも定期的に開催しています。

交流にぎわい等

 「情報発信棟」では、24時間利用可能なトイレの設置と県内の道路情報・観光情報のインフォメーション等を行っており、施設案内・観光案内を行うコンシェルジュが常駐し、奈良の歴史文化資源や観光等に関する情報を発信しています。当施設の運営については、施設管理や貸館業務、直売所・レストラン・情報発信棟の運営業務等は指定管理事業者が行っていますが、文化財や芸術に関する事業は県が企画・実施しており、官民連携で運営しています。

情報発信棟

多機能複合施設としての強みを活かした取組の充実・強化

 当施設の来村者は、開村から約4年(令和8年2月末現在)で延べ約257万人です。棟別では直売所やレストランがある交流にぎわい棟が年間約30万人と圧倒的に多いものの、文化財修復・展示棟や芸術文化体験棟の各棟も年間約7万人程度で、同種の施設(博物館・美術館等)の年間来館者数の全国平均と比べても多いと言えます。

 これは交流にぎわい棟に買い物や食事に来られた方が他の棟にも立ち寄られるためで、まさに多くの方に文化財修理や芸術に触れ「なぜ?」が芽生えるきっかけづくりとなっていると思われます。

 また芸術文化体験棟で活動するアーティストと文化財修理に関わる技術者や県内事業者との異分野交流もあり、これも多機能複合施設ならではの取組だと感じています。

 今後は、施設内各棟の多分野間の連携をより充実・強化して、事業内容も多機能複合的に進めていきたいと考えています。さらには、県内市町村や関係機関等との交流や連携も積極的に進め、県内の文化・芸術・観光・地域振興の拠点となることを目指していきます。

おわりに

 当施設は令和8年3月に開村4周年を迎えました。これまでの4年間の取組を基盤として、今後もより多くの方々に当施設にお越しいただき、奥深い奈良の魅力を五感で感じながら、新たな知性や感性を育んでいただける様、様々な取り組みを進めていきます。豊かな自然と歴史・芸術をはじめ多くの文化に触れることができる「なら歴史芸術文化村」で、「なぜ」が芽生え、「知る」を楽しんでみませんか。皆様のお越しを心よりお待ちしております。